『Gakucho Meet』

地域学部教員編(令和2年月)

10年後、鳥取大学はどうあるべきか?将来の鳥取大学の理想の形は?

参加者A:

個人的には、現状に非常に危機感を持っています。運営費交付金は重要である一方、国から提案や指示のあったものに対して議論もされずに鵜呑みにしている現状があると思い、大変懸念しています。

 鳥取大学としては、地域学部を立ち上げて地域に根差した大学を目指しているとともに、地域から物事を発信していくことが重要なのではないかと考えています。今後は、18歳人口の減少により偏差値教育のヒエラルキー型の価値観が問題になると考えており、偏差値の価値観や評価軸を見直す必要があると思います。そのためには、地域に根差した大学が主導で、小学校以降の教育も変えなければならないと思います。

参加者B:

 国立大学が置かれている状況については参加者Aと同じ危機感を共有しています。地域学部で授業を担当していると、地域の方が熱心に受講していることが分かり、地域に学びを求める方がいるなと感じています。人口減少下で18歳人口だけを対象とするのではなく、地域の方も対象とすればよいと思います。

現在の教育においては、大学生は同質の集団であり、異質の環境に非常に弱いように感じています。少しずつ異質にさらしていくことが大学生にもメリットがあり、また大学としても間口が広がると考えていますし、留学生に対して幅広く受け入れていくことも必要だと思います。いろんな世代の方を受け入れる、いわゆるリカレント教育の幅を広げて、大学自体を張り合いのある空間にしていくのがいいのではないかと思います。


今後、リカレント教育をどうしていけばいいのか?

参加者C:

 地域学部の人間形成コースでは、社会人がリカレント教育の講義をよく受講しています。授業の中に現場の先生(小・中・高等学校の教員)がいます。人間形成コースは現場の教育方法や教育学のカリキュラムがあるため、リカレント教育が実施できていると思います。現場の先生が現場の問題意識を大学に持ってくる、あるいは行政マンが1年間研修を大学で実施するといったことを大学が需要喚起しマッチすれば、社会人が入ってきやすいのではないかと思います。教育はマッチしやすかったから、現場の先生が入ってきているのではないかと思います。現場レベルから創発していくのがいいのか、経営サイドから発信して開拓していくのがいいのかという問題はありますが。

学長:

 両方だと思います。こういう声が上がってきて、大学を活性化していかなければならない。

参加者B:

 社会に大学を使ってもらうという意味での活性化でもいいのではないかと思います。

学長:

 今の段階では、大学はまだまだ開放できていないですか?

参加者B:

 まだまだだと思います。いろんな現場の人が見えるようにするのがいい。


地域学部の現場はどういう状況か?

参加者C:

 現場は疲れている状況です。教育に時間をかけたい、教育を重視したいが、そこにかける時間がなくなっている。ひとつの授業の準備をするために、やりたいアイデアと思いがあっても、そこにかけられる時間が現場レベルにはない状況。将来的に、この問題をどうやって解消していくかがキーになってくると思っています。

 また、同僚がどんどん辞めていきます。同僚はすごくステップアップして辞めていくわけでなく、置かれている環境が嫌になって、もう少し落ち着いている大学へ移っていくという辞め方。いい人材にいてもらえるように、仕事の質を上げる方向に舵を切らないと、つぶれてしまうのではないかという危機感を持っています。

参加者D:

 参加者Cと共感することがあって、同僚が少なくなっています。辞めていった先生の授業も私が一度に担当しなくてはならなくなりました。授業だけで一日が終わってしまうことがよくあります。人を減らしていかなくてはならないが、そうしたときに、担当教員がどれだけ余分にさかなければならない時間が増えるのかということを見てほしいです。

参加者E:

 他の参加者と共感する部分があります。また、大学が人員削減し、運営が厳しい現状は分かりました。お願いしたいのは、削減した経費を有効に使ってほしいことと、削減した影響が学生や教員に及ばないようにしてほしいです。

 また、コロナ禍を利用してほしいと思います。オンライン授業を利用すれば、世界中に届けることができる。言語の問題はあるが、将来AIでカバーできると思うので、活用して世界へ発信してほしいと思います。

学長コメント 若い教員との会話の中で印象に残ったこと、共感したこと~

 開かれた大学にすると、多様な人が学ぶ場となり、その結果生じる多様性のあるキャンパスが、人を成長させる場となります。大学の教育力、研究力を伸ばすには、現場の多忙感を解消して、教育と研究に費やす時間を確保する必要がある、ということが心に響きました。