『Gakucho Meet』
医学部教員編(令和2年8月)
10年後、鳥取大学はどういう形になったらいいのか?10年後、どういった形で研究や医療を進めているのか?
参加者A:
鳥取大学は、新しく自分たちのスタイルでやっていくしかないと漠然と思っています。具体的な話は思いつきませんが、鳥大のいいところが2つあると思います。1つは研究です。医学部では、基礎の先生と病院の先生の仲が良く、これは他大学ではなかなか見られない。そのため、学内での研究の連携は、他大学よりアドバンテージがあります。2つ目は教育であす。基本、鳥大生は非常に真面目で、悪いことをしない、また素直です。そのため、勉学に励み、自分を伸ばしていけるではないかと思っています。
参加者B:
今の少子化の状況を考えると、大学自体の存続が将来的に難しく、その中で生き残っていくためには努力をするべきだと思います。その中の一つとしては、学生を確保するために魅力ある教育や研究が行われているということを、発信していく力が大事かなと思っています。最近医学部では、プレスリリースを活用しており、ニュースによく取り上げられています。医学部を事例に、全学をあげて取り組み、魅力を県内だけでなく県外にも発信できたらいいと思います。
医学部の教員確保や研究環境は?
参加者B:
教育側の人材の確保について、比較的鳥取大学は教員に対して優しい場所であると思います。若手教員が長い期間続けて研究をできる場所であると思う反面、研究スタート時にお金がないため最初のバックアップがあれば大学に来てよかったなと思うのではないか。また、ポストを残した状態で1年~1年半に海外で研究する環境があればいいなと考えています。
学長:
医学部の教員としての研修はどうですか?
参加者B:
大学でなく、鳥取県の職員という形で給与をもらいながら、研修に行ったことがあるという話を聞いたことがあります。
人、大学の個性を育てるには?
参加者C:
私が所属していた研究室の先生の指導方法は、配属してきた学生に自分の好きなことをやらせる、テーマは決して与えず、興味のあることをさせるでした。なぜこういうことをしていたかというと、個性を育てるには何も与えてはいけないという考えによるもので、何かを与えた時点で個性は死ぬだろうという考えによります。たいていは入ってきた学生は何もなくて、半年くらい論文を読む形になるが、待っていると、発言するようになります。最初は支離滅裂だが、それがだんだん形になって、結局テーマが決まって論文を書けるようになる。大学院へ進学した学生の中には、学術雑誌に英語の論文を投稿するようになった人もいる。そこまで行くと、個性の塊になります。研究者としてやっていきたいと考えたときに、このシステムで育ったら、自分で全部やってきたことが自信になって、個性という意味では確立させてもらえたと思います。大学が個性を出すことを考えた時に育てていくことだと思いますが、大学に個性が育つ仕組みがあるのだろうかと考えた時に、本当の意味の自由な環境が必要ではないかと思います。
学長:
自立していくや自分の考えで動く、自分の個性を出すためには、教育は待つことも必要かなと思います。そのあたりはどうですか?
参加者C:
人を育てる方法は待つしかないという考えの研究室でした。それがいいのか、間違っているのかは分かりませんが、そういうやり方があってもいいのではないかと思います。
参加者D:
国の方針を決める人はどこまで地方の現状を知っているのかという疑問を持っています。もちろん紙媒体やデータで地方がどうかということは知っていると思いますが、実際に入らないと分からないことが多々ある中で、知らない方々に方針を決められてもどうかと思います。方針を決める方々にアピールする具体的な方法は思い浮かばないが、疑問に感じています。
医学部の教育や研究で思うところは?
参加者D:
教育という面では、学生を見ていて思うことは精神的に落ち込んでしまう学生が多いように思います。鳥大に多く入学してもらうために、精神的なケアもしていることをこちらから発信するのはどうかなと思っています。学生の間でもSNSで発信したり、ツイッターでつぶやいたりしているので、そうしたところから高校生を持つ親御さんに広がっていくと思います。医学部でも精神的なケアを実施しているが、今はうまく回っていないが、うまく精神的なケアもしていけたら、教育もうまく回って、入学者や受験生獲得にもうまくつながるのではないかと思います。
参加者E:
地域の高齢化や高齢者医療のことは、山陰の方が、国が考えているよりも20年くらい先に進んでいて、国の方が遅れています。高齢者の医療や人の最期を考える、看取っていくことのプロセスについては、先進的な取り組みをしていかなければいけないなと感じています。うちの講座の先生方は、自分の分野以外の先生とのつながりを自分から取ってきており、いいなと思う先生とつながって、そこで学生を連れて行って現地で教育を行い、自分の研究を行っているようなことをしています。また、医学の世界と異なる視点を入れて、自分の知らないところと対話してお互いの理解を深めようという姿勢を学生に伝えていき、より良い医者を育てていくということをしています。
今回、コロナ禍のオンライン授業で教員も新しいチャレンジをしていますが、学生が自分で考え、患者さんへの対応も考えてもらう構造の教育をやっていきたいと思います。
参加者F:
自分が学生の時と比べて、今の学生は真面目すぎるぐらいで、手を抜いた方がいいのにという時でも手を抜けなかったりします。真面目でいいところを伸ばしたいなと思う一方、自分たちで行動していくことが苦手だと思う。発想力というところ、こういうことをやってみたいやこういうことをしていきたいなどはなく、あまり活発でないように思います。学生と一緒に課外活動をしている際に、学生にやりたいことがあればサポートすることを伝えても、なかなか出てくることはなく、与えられたことはするがそれ以上はなかなかできないと感じています。このことは勉強や実習の面でも見られ、答えを欲しがる傾向がある。こちらがある程度選択肢を与えてじっくり学生に考えて行動してもらえるような、力を伸ばしていけるような教育、卒業後に生かせる教育を心掛けています。
看護を研究していくことを学生自身、重点的に考えていないと思います。研究計画をしっかり立てて、実施していくことは時間の都合上できないうえ、学部の中では、最初の文献検討である土台作りをじっくり行うくらいです。卒後病院勤務では3年目研究があるので、最初の土台部分、研究計画に至るまでの間で困らないようにすることしかできないのが現状です。最近は卒業生が大学院へ来てくれるため、臨床しながら研究を続けていってくれるような人材を育てることも役目だと思っています。
参加者G:
教育に関しては10年後を考えると、少子化もかなり進んでいて、その中で地方大学がどれぐらい学生を確保できるかだと思います。また、鳥取大学の魅力を発信し続けることが重要だと思います。地方大学のため、発信を止めてしまうと、何をやっている大学なのかが伝わらず、学生が遠のいていくのではないかと思っています。
研究に関しては、個人的には学科や分野を越えて、いろんな先生と研究できる機会があるといいなと思っています。学科を越えて広く研究していくと、鳥取大学からたくさんの論文を出せると思います。広くいろんな先生方と研究できる雰囲気があると、大学からたくさんの論文が出たり、いい研究ができるのはないかと考えています。
大学病院の医師はどんな状況なのか?
参加者G:
医学科では臨床系に属している医師がほとんどです。学生の間に医学研究をしようと思っている人はほとんどおらず、お医者さんになろうと思って入っている人がほとんどです。私の場合は、卒後研究しなければならないとは思わず、医師免許に受かったのでお医者さんなろうと思い、先輩の声掛けにより部活に入るノリで医局に属し、気が付けば大学にいました。医師としての研鑽を積みながら、卒後3年目の春に大学院に進学しその後修了し、大学にいる限り研究もしていかなくてはならなかったのだとそのあたりで気づきました。全学を見渡してみても医者が研究者として一番未熟だと思います
医師だけでなく、教員としての立場も与えられ、学生の教育をしないといけない、あるいは外部からの資金を獲得し、自分でテーマを決めて研究をしないといけない。現在も、もがいていて10年後の自分は想像できないところがあります。もがくことで外部との競争力を高めてアピールしていって、鳥取大学を世界に少しでも知ってもらえたらという気持ちがあります。
学長コメント ~若い教員との会話の中で印象に残ったこと、共感したこと~
鳥取大学で魅力ある教育、研究が行われていることを学外に発信することが大事で、それが学生の確保にもつながります。専門以外の世界を知り、人間性をつけることが医療人はじめ専門家には大事で、個性を伸ばす教育、じっくり考えて行動する力をつける教育の必要性を理解しました。